簡単すぎて見える句動詞のワナ

簡単すぎて見える句動詞のワナ

ここまでで、runbreakturnlookset のそれぞれが、ひと握りの粒子(particle)から十以上もの意味を生み出すさまを見てきました。この一家を巡る最後の停車駅は、危険なところです。何の苦もなさそうに見えて、自信のある学習者をそれでもつかまえてしまうワナたちです。これから挙げるフレーズは、当たり前に思える、まさにその瞬間まで当たり前なのです。

ざっくり答え

句動詞のミスの多くは、三つの静かなワナから来ています。第一に、同じ動詞でも粒子が違うと、意味がまるごとひっくり返ることがあります(take in と take on)。第二に、分離する句動詞もあれば、しない句動詞もある(分離可能 vs 分離不可能)。第三に、粒子が前置詞に化けることがあり、文の組み立て方が変わってしまいます。この三つのパターンを見抜けるようになれば、「簡単」なミスはほとんど消えてなくなります。

ワナたち

ワナ 1:一つの動詞、二つの粒子、二つの世界

これがシリーズ全体の核心です。粒子を入れ替えると、意味が跳びます。

  • take in = 吸収する・理解する("I couldn't take in all the new information")に対し、take on = 挑戦を引き受ける("She decided to take on a second job")。
  • put off はそれ自体で二つの意味を持ちます。延期する("Let's put off the meeting")と うんざりさせる("The smell really put me off")です。
  • run into = 偶然出会う、run over = 車ではねる・制限時間を超える。
  • break down = 故障する・泣く、break through = 障害を越えて成功する。

教訓はこうです。動詞だけをけっして信用しないこと。粒子が意味の半分なのです。

ワナ 2:分離可能 vs 分離不可能

句動詞のなかには、動詞と粒子のあいだに目的語が滑り込めるものもあれば、それを拒むものもあります。

  • 分離可能:"Turn the light off" も "Turn off the light" もどちらも成り立ちます。目的語が代名詞のときは、必ず真ん中に入れます:"Turn it off" であって "Turn off it" ではありません。
  • 分離不可能:"Look after the kids" は "Look the kids after" にはできません。動詞と粒子はぴったりくっついたままです。

確実なテスト:it のような代名詞を二語のあいだに入れてもまだ自然に聞こえるなら、その句動詞は分離可能です。「動詞 + it + 粒子」が壊れて聞こえるなら、分離不可能です。

ワナ 3:粒子 vs 前置詞

これは微妙です。"She ran up a huge bill" では、up は意味の一部をなす粒子です。"She ran up the hill" では、up は方向を表す前置詞です。前者は比喩的(借金を積み上げる)、後者は文字どおり(坂をのぼる)です。同じ単語でも、文法が違います。手早い確認法は、目的語を動かしてみることです。"She ran the bill up" は成り立ちます(粒子)が、"She ran the hill up" は成り立ちません(前置詞)。

よくある間違い

  • "I can't take on so much information." → "I can't take in so much information." · take in = 吸収する、take on = 仕事を引き受ける。
  • "Please turn off it." → "Please turn it off." · 分離可能な動詞では、代名詞は真ん中に入ります。
  • "We need to look the matter after." → "We need to look after the matter." · look after は分離不可能で、何も割り込めません。
  • "He put off by the rude reply." → "He was put off by the rude reply." · 「うんざりさせる」の意味では、put off はたいてい by を伴う受動態になります。
  • "She ran the hill up quickly." → "She ran up the hill quickly." · ここでの up は前置詞なので、目的語は動かせません。

試験のワナ

こここそ、テストが本領を発揮する場所です。一つの問題が、これらのワナを同時に二つ隠せるのです。たとえば、"The director decided to ___ the new project despite the risks." 選択肢に take intake on の両方が含まれていたら、不注意な読み手は最初に見覚えのある単語に飛びつきます。でも、当てはまるのは take on(挑戦を引き受ける)です。take in(吸収する)は "project" とは意味が通りません。どんな試験でも、攻略法は同じ三段階のチェックです。(1) 動詞の文字どおりの根っこを見極める、(2) その根っこに粒子が何をしているかを問う、(3) 目的語の位置が文法的に正しいかを確かめる。この三つを走らせれば、「簡単すぎて見える」ワナはその牙を失います。

ミニ練習

  1. There's so much detail in this report; I can't _____ it all _____.
  2. She agreed to _____ _____ the leadership role next month.
  3. Can you _____ _____ the radio? I can't hear it.
  4. Please don't _____ _____ the appointment again; we keep postponing it.
  5. Could you _____ _____ my plants while I'm traveling?

解答

  1. take / in情報を吸収するのは take in。代名詞がフレーズを割っている点に注意。
  2. take on挑戦や役割を引き受けるのは take on です。
  3. turn up音量を上げる、の意味。turn up は分離可能なので "turn it up" も成り立ちます。
  4. put off延期するのは put off。これも分離可能です。
  5. look after何かを世話するのは look after で、分離不可能です。

ちいさなまとめ

ワナ 確かめること
同じ動詞、違う粒子 粒子が意味の半分を担う
分離可能な動詞 代名詞は真ん中に置く:"turn it off"
分離不可能な動詞 けっして割らない:"look after it"
粒子 vs 前置詞 目的語は動かせるか? なら粒子
一つのフレーズに二つの意味 文脈(目的語)に決めさせる

句動詞は暗記の競争ではありません。千通りの衣装をまとった、ほんの少しのパターンの集まりです。動詞の根っこを見抜き、粒子を見つめ、目的語がどこへ動けるかを確かめれば、「簡単すぎて見える」ワナも、ついにフェアに勝負してくれます。

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